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研究成果

研究報告

東北大学大学院医学系研究科プリン蛋白分子解析分野:堂浦克美

プリオン脳内感染動物において経口投与で発症遅延効果を発揮するアミロイド親和性化合物を発見したことを報告している。今年度はこの化合物の治療効果と作用機序について、さらにin vitroとin vivoでの解析を進めた。その結果、本化合物は正常型プリオン蛋白の発現に影響せずに、異常型プリオン蛋白の産生を阻害し、感染因子の蓄積を抑制した。脳移行に優れていたが、当初想定していた以上に脳からのクリアランスが迅速であった。また、治療効果は投与時期に大きく影響されることが明らかとなった。
本年度の結果から、この化合物は異常型プリオン蛋白に結合して正常型が異常型へ変換されるのを阻害しており、一旦出来た異常型プリオン蛋白には無効である可能性がある。また、脳移行性とクリアランスに関する結果より、この化合物がより一層優れた治療効果を発揮するためには長時間にわたり脳内で一定以上の化合物濃度を保つことが必要であると考えられる。徐放的に作用させるような投与方策が開発できれば、治療効果が上がることが期待できる。さらに、治療効果の解析結果から、より長期間にわたる発症遅延効果を期待するには、できるだけ感染早期より投与を開始することが絶対条件であることが明らかとなったが、それ以外にも長期間投与による薬効低下を抑えることが必要で、薬効低下をきたす前に休薬期間を置く間歇的投与法なども検討してみる必要があるかもしれない。

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