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研究成果

プリオン感染および治療に伴って発現が変動する遺伝子の解析

名古屋市立大学医学研究科実験動物教育センター:三好一郎

 

プリオン病の感染初期,異常感染型プリオンタンパク(PrPSc)の増幅など生体の特異的な反応に関与する分子を探索する目的で,プリオン持続感染マウス神経芽細胞腫株(ScN2a)の治療および再感染の際に発現の変動を示す遺伝子を調べている。
再感染実験で定量的に高発現を示した6遺伝子(表)およびNpdc1(neural proliferation, differentiation and control 1),Ugcg(glucosylceramide synthase) に関して, siRNA導入による遺伝子発現の抑制がScN2a-5プリオン高感受性クローンのPrPSc増殖にどのような影響があるかイムノブロットにより解析した(図)。6遺伝子(Afg3l1, Cdca3, Nup43, Ppp1cb, Sdf2l1, Surf4)の発現抑制は,細胞増殖率が低下するにもかかわらず,図のように相対的PrPScの蓄積を助長した。逆に間接的な原因であっても,遺伝子の発現が高くなるとPrPSc増殖が抑制されたことから,これら,異常タンパク反応あるいはシャペロン活性化,小胞体関連分解など,たんぱく質の品質管理や細胞内輸送に関連すると考えられる遺伝子は,凝集化したPrPScを感染源として反応可能な状態に触媒する可能性はあるものの,PrPScの増殖を抑制するために発現・機能し,その発現が抑制されるとPrPScの増殖を促進することが示唆された。この現象は,細胞内応答として矛盾しないが,これらの分子がプリオン感染初期に特徴的なマーカーとしての可能性を持つか興味深い。

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