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進行性多巣性白質脳症(PML)

PMLとは

岸田修二(東京都立駒込病院神経内科)

概念

大脳表面の神経細胞が存在するところを大脳皮質と呼びますが、皮質の内側には白く見える部分があり、白質とよび、神経細胞からの連絡線維が髄鞘を被り走行しているところです。髄鞘を形成するオリゴデンドロサイトにヒトのポリオーマウイルスに属するJCウイルスが感染し、その結果白質のあちこちで進行性に髄鞘がこわれ(脱髄と言う)、亜急性の経過で脳の荒廃をきたす病気です。

原因

ヒトのポリオーマウイルスに属するJCウイルスが原因となります。このウイルスは、健康な成人の80%以上に感染しており、至る所に普遍的に存在するウイルスです。幼小児期にほとんど感染し、腎臓に持続感染し、時々尿に排泄していますが、ほとんど何も症状を出しません。

発症メカニズム

発症メカニズムははっきりしていませんが、エイズや抗癌剤、免疫を抑制する薬を服用し、免疫力の極めて低下したヒトに主に発症していることから、腎臓に潜伏しているウイルスが、患者さんの免疫力の低下に応じて病原性の強いウイルスに変異し、脳に感染するものと考えられています。

疫学

発症年齢:1999年~2004年にわたり日本人を調査した結果では発症年齢は25歳~77歳(平均53歳)と中高年に多く、男女差はほとんどありませんでした。ただしエイズ患者さんでは少し若年化し、また男性に多いようです。

背景となる疾患

諸外国ではエイズを背景に高率に発症していますが、本邦ではまだ血液系悪性腫瘍、膠原病、慢性腎不全で透析中などエイズ以外の疾患で免疫力が低下した状態で発症しています。なおわが国でもエイズ患者さんの漸増傾向を受けて、増加傾向にあります。
本邦では1年間に10人前後発症しており、人口100万人に1人ぐらいと非常に稀な疾患ですが、エイズ患者さんに限ると、PMLの発症率は4%前後と報告されています。
なお、この病気は遺伝はせず、発症したヒトから他のヒトに感染する病気でもありません。

症状

半盲など視力障害、片麻痺など運動障害、知能・記憶障害など痴呆症状、失語症などの大脳の機能障害で発症します。経過中に病巣が多くなるにつれ、運動麻痺や認知機能の障害の率が高くなり、そのほか言語障害、嚥下障害、脳神経麻痺、など様々な症状が出現し、数ヶ月の経過で無動・無言の状態となります。小脳や脳幹部の症状からも発症することがありますが、少ないようです。

検査所見

  1. 一般的血液検査では本症に特異的な異常はありません。また血清でのJCウイルス抗体もほとんどのヒトが陽性を示し、診断的価値はありません。
  2. 脳髄液検査では脳脊髄液中の細胞がわずかに増加する症例があり、また蛋白も軽度増加する例がありますが、診断の役には立ちません。髄液からJCウイルス遺伝子を検出、特有な遺伝子配列を確認すれば本症の確率が高くなります。
  3. 脳CT及びMRI:とくにMRI T2強調画像は鋭敏で、大脳白質に高信号域を示す大小不同の脱髄病巣がみられます。この病巣は通常は脳浮腫などを伴いませんし、造影剤を注射して行ったCTやMRIでも、通常造影剤で病巣が強くでることもありません。この画像検査は上記した髄液検査とともに非常に診断に役立ちます。

予後

発症後基礎にもっている疾患のコントロール、とくにエイズでは抗レトロウイルス剤治療が奏功し、免疫力が高まった場合、数年にわたり(今回の調査では非エイズ患者さんで75ヶ月以上、エイズ患者さんで51ヶ月以上)生存し、症状の進行が停止したり、改善する例もありますが、長期生存例でも高度な後遺症を残すことが多く、現在のところ多くは進行し、ほとんど1年以内に死亡する生命的・機能的予後不良の疾患です。

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